社団法人 北九州中小企業経営者協会(中経協)

外部リンク

会長対談「この人と語る」

HOME > 【連載・特集】会長対談「この人と語る」
【連載・特集】会長対談「この人と語る」
北九州で活躍されているゲストの方々をお招きし、最新のビジネス動向や北九州の現状、これからについて等、様々な話題を語っていただく会長対談連載シリーズです。
 
会長挨拶 対談を読む 対談を映像で見る ゲストプロフィール
 
現代美術は非常に大きなマーケットであり、多くの他分野との出会いの場でもあるのです。
中村氏:
CCA北九州は二つの見方があるんです。若いアーティストを養成する世界的なリサーチプログラムを行っているアートセンターだと言う人もいるし。現代美術の複雑な研究機関だと言う人もいるわけですよ。
企業と同じで、これからはひとつの業態が3年から5年でアメーバのように変化していくぐらいの柔軟性がないと、やっていけないと思います。日本の美術館は、この20年ほど運営内容について全く議論してこなかった。ハードを建てればそれでよかったわけです。最近ようやく運営内容重視になってきましたが、根本的なことから見直さない限り新しい動きは難しいでしょうね。例えば日本の美術館の展覧会は、新聞社やテレビ局の主催が多いですよね。年間5〜6本の展覧会で美術館主催は一つくらい。美術館独自の考え方で運営しているところが数多くあるとは言えません。
 
会長:
アウトソーシングするようなものですね。
 
中村氏:
ただ、単に新聞社やテレビ局が悪いというわけじゃない。それだけ広告もでるし、持ちつ持たれつなところもあるわけですよ。
 
会長:
それが日本の美術界の現状で、その旧態依然としたやり方から脱却しなければならない。
 
中村氏:
そうです。そこには大きな疑問もあるわけで。でも、それを全部否定するのではなく、バランスが大きな課題でしょう。
 
会長:
お話を聞いて、美術界における世界の流れと日本の流れとのギャップがあり過ぎるということが分かりました。五年先どうなるかわからないという時代に、20年前と同じやり方を継続しているということですね。
 
中村氏:
そうなんですよ。
 
会長:
その原因は、運営内容が問題視されてこなかったことにあるのですか。
 
中村氏:
そうです。人材育成もないから踏襲していくしかない。美術教育も含め、それと全く違った考え方や方法が実現されるには難しい状況もありますしね。
 
会長:
ひいては世界を知らないと。
 
CCA北九州ディレクター中村 信夫 氏
中村氏:
そうですね。ところがこれだけの情報社会でしょう。美術大学で学生が学んだり経験したりすることと、一歩本屋さんに行って海外の雑誌を見たりインターネットで調べたりして得る情報との間には、やはりどうしてもギャップがある。アジアということに関しても、現実と日本の中の考え方には違う部分があったりして、日本が取り残されているようなところもある。僕みたいな現代美術の世界の人間は、ビジネスとまったく関係ないという感じがあるでしょう。とんでもないですよ。現代美術は非常に大きなマーケットであり、また多くの他分野との出会いの場でもある。
イタリアのヴェニスではビエンナーレという美術の祭典が2年に一度開催されます。小さなセンターですが、活動が面白いということでそこにCCAは招待されます。そこで小さな展覧会をすると、1ヶ月半で29万人くらいの人が見に来ます。北九州の名前で29万人が見に来ているわけで、すごく嬉しいんですけど。海外の美術館は、どこも評議会、理事会があります。理事会のメンバーは、銀行の頭取とか、大手企業の社長らで構成されています。彼らや現代美術のコレクターたちは、ヴェニスに自家用のヨットで料理人連れてきて、好きなアーティストを招待する。それがどのくらいのビジネスになっているかということです。
 
(社)北九州中小企業経営者協会 会長住田 精宏 氏
会長:
根底に文化が違いますね。金持ちの桁が違うんですよ。戦後、アメリカから金持ちができないような仕組みを作らせられたのでしょう。

中村氏:
CCAは十年前にスタートしました。北九州で出来ないと言われたことを、それなりに作ってきたんですね。CCAは日本にあって、そしてアジアの中にあります。やはり西洋と考え方が違うわけです。そこでCCAは、現代美術が世界でどのように動いているかをしっかりと把握して、世界に対して自分たちの意見を小さくてもしっかり出してきました。そうすると欧米の美術界は、自分たちにないものを持っているところには必ず評価を出します。考え方を持ち、しっかりした方針で運営しているということを伝えることがとても大事なのです。自負しちゃいけないけれど、現代美術界では「北九州」の名が世界に通っているんですよ。ゴルフのトーナメントに例えると、ここはひとつのメジャー会場です。世界のアーティストが転戦して、つまり展覧会のために色々なところに行く。CCAは大きなスペースもありませんが、彼らが来たいと思うような場所にしてきました。アーティストは好奇心が大変強いですから、北九州がどういう地域なのか、それと今までどのようなアーティストが来たかに興味があります。どんな大きな美術館でも、企画内容が散漫で、今月は現代美術の展覧会、来月になるとお茶やお華の展覧会、次はアマチュアの人たちの絵画展となると、いくら招聘したいアーティストがいても、難しいですね。
 
会長:
場所貸しだけで、主義主張がないということですね。
 
中村氏:
その通りです。方向性がないわけですよ。ですから最初の3年間は難しかったですね。なぜ地元や国内のアーティストをやらないのかと言われました。その間に蓄積したものが、徐々に認められてきまして。世界のトップクラスのアーティストが来るようになったんです。
招聘したアーティストは、ここのギャラリースペースで作品制作をします。CCAはそれをもう一回再現できるんですね。作品というのは面白くて、仮に材料費が100万円かかったとします。その作品が10倍、20倍くらいで売れるわけです。CCAは今まで55人ほどのアーティストが来ていますから、55点の作品を再生して展示できるわけです。
 
会長:
なるほど。そのコピーライトできる権利のものが。
 
中村氏:
ええ。ということは、例えば1作品100万円の材料費で作ったとしても、50作品だったら、何億の作品をもう一回作る可能性が出来るわけです。これらを門司港の空き倉庫を利用して展示すれば、今までとは違った、例えばアートに敏感な若い人たちやファッションに興味のある人達を含む観光客が来てくれると思うんですよね。今、ファッション業界の背景には必ず現代美術館があります。招聘アーティストの作品を展示したら、まずファッション誌が必ず来ます。あと、自動車業界。先日も某有名ブランドの広報から、CCAがもっと作品を置いてくれたら、是非撮影したいと言ってきました。
北橋新市長はソフトに重点を置くとおっしゃっていますが、そうすると、こういうところが一番重点的になると思うんですよね。ですから、僕はすごく期待しています。
 
知らない世界のお話だと思っていましたが、ビジネスの社会と一緒なのですね
会長:中村さんは東京のご出身ですね。CCA北九州に来られたきっかけは?

 
中村氏:
高校を出た後、ロンドンで大学・大学院へ10年間行って、帰国したのは30歳前でした。国の機関で働いているときに、日本の美術界のシステムを知って、独自の考えで美術館をやりたかったのですが、難しいと思い辞めようかと考え始めていた矢先に本を出版したんです。これが売れまして。日本中の本屋さんに招待されて、話をするようになりました。当時、小倉の金栄堂さんに呼んでいただいて、講演会をしたんです。その時に数十名の方から、このまちで文化をテーマに何かできないかっていう話がでました。そこで、一過性のイベントでなく次の世代まで残すものだったらしましょうと。最初は小さくサマースクールを始めたんです。それがきっかけで末吉市長(当時)とお会いして。自分としてはチャレンジだなと思いました。全く企業と同じですよ。ゼロから始めて、世界の美術界にどうやって北九州を認知してもらうかっていうことを考え始めたんです。世界の北九州になったら楽しいでしょう?現代美術って、難しいというイメージだけが出ていますが、その背景には大変大きなもの、世界の美術界、デザイン、ファッションなどその他のものもあるということを、経営者のみなさんにも知ってほしいと思います。
 
会長:
そうすると、なぜ北九州で頑張るんですかということをお尋ねしたいのですが、それは出発したときから10年間応援してくれた義理からですか。
 
中村氏:
それだけじゃないですよ。やはりここの街の魅力ってすごくあるんですよ。
福岡市は僕から言わせると、東京、大阪に並ぶような大都会で、それはそれでいいのですが、北九州は他にはない独特の雰囲気を持っている。
 
会長:
中村さんから見て、北九州は面白い。
 
中村氏:
すごく魅力のある街で、ここにしかない風景を見ることができる。それにそれほど東京を意識してない。そういう独自性があるのと、金属加工の分野ではほとんどの企業がありますよね。これはすごいことです。ハリウッドは映画関係なら何でも手に入るのと同じです。この街は、ものづくりの専門家といつでもコンタクトできるんです。
 
会長:
なるほど。嬉しい話ですね。今日はありがとうございました。知らない世界を見せていただきましたが、ビジネスの社会と一緒なのですね。
 
中村氏:
全く同じですよ。10年で積み上げてきたノウハウを、北九州のために利用してく仕組みをビジネスの人たちと一緒に作っていきたいですね。